ジーンズを穿くのは初夏以来か。着たい服を着るというのはたいへん有り難い幸福だが、気候がそれを許さないこともある。社会情勢に制限されることもある。職業によって規定されることもあるだろう。着たい服を着られることについてしみじみと考え、出かけようとしたら、革靴の紐が切れた。当座の紐に付け替え家を出て、地下鉄の駅のミスターミニットで新しい紐に替えた。これは便利な店だよなあ、と感心した。
西武渋谷に寄った。今日が営業最終日だった。店の中は閉店セール、外ではファンやマスコミがカメラを向けて、異様な賑わいであった。セールとはほとんど無縁の紀伊國屋で今日も文庫を1冊買った。棚は、何日か前から商品の補充がされていないようで空白が目立ち、寂しかった。ヘミングウェイの未読の長編を選んだ。まだ読んでいない長編があったことはうれしい驚きだった。買ったのは『河を渡って木立の中へ』、そういえばそんなのもあったか。出来は悪いらしいが読むのは楽しみ。
一連の惜別の買い物(渋谷に来たら西武渋谷で文庫を1冊買う)は、海外SFの棚とポール・オースターを漁って、最後はヘミングウェイ。10冊くらい買ったらしい。よい思い出になった。
西武渋谷は、渋谷が嫌いなぼくにとっての、心落ち着く逃げ場だった。逃げ込んだときは、礼として、たいていは紀伊國屋で本を買った。
ぼくもニコンに20mmを付けて通りから何枚か写真を撮って、別れとした。閉店の瞬間は見ずに、18時半ごろ帰路に就いた。

