吉祥寺でおゆきはんとドクター・JB(以下、おジョブ)と待ち合わせる。
ぼくの方が遅く着くと、おゆきはんはトイレに行っているとのことで、おジョブと中央線の思い出なんかを語りながら待った。ずいぶん待たされて、やがて渋面のおゆきはんがやってくると開口一番「東京の女トイレ長いねんけど、全然列進まんねんもん、あれ中でなにしてんの、トロいって、いやトロいやろ」と言う。「そりゃ化粧でしょう」「化粧外でせえって、なんなんほんま、なあ、見てえ、ボーダーなかったからストライプにしてん、こうしたらボーダーやろ」と言って体を「つ」の字のように曲げてくねくね人混みを歩く。好きだ。
東西の女子トイレ事情については俄然気になる。単純に東京は人の数が多過ぎるだけ、とは思うけど、性格の地域性(というか関西の特殊性)が関係しているとしたら面白い。
井の頭公園でピクニックをして過ごす。
おゆきはんは手作りの「揚げていない唐揚げ」と「クスクスのサラダ」を、おジョブはフランス製のポテチとパテ、ぼくは西荻・アンセンのパンとギターを持ち寄った。食のプロのおゆきはんとピクニックをするというのは、純粋なラッキーである。料理はとても美味かった。あんまり美味いから、おゆきはんちに入れないか、と訊いたら、「いいよー」と言う。入れた。なかなかよい3人のコンビネーションであった。
ぼくはフランス人のおジョブに、ぼくが東京で一番美味いと思っているベーカリーのパンを食べさせたくて西荻・アンセンに寄って来たのだ。おジョブに感想を訊くと、つまらなそうな顔で小首をかしげて「うん、まあ美味しいよ」と言う。もっと美味しそうな顔をしなよ、「まあ」ってなんやねん、と思う。こんなときアメリカ人だったらぼくの背中をバシバシ叩いて褒めてくれないだろうか。これがフランス人かな、と理解は進む。無論、相互理解は重要だ。
先月から俳句を始めたおゆきはんに俳句講座を開いたり(テキストを用意して行った)、ぼくのギターで広末を歌ったりした。
隣に陣取っていた妙な色気のある女がぼくの演奏を褒めて、ぼくはすこし調子に乗りつつ、なんかイケそうだなとは内心思っていたが、おゆきはんの信頼を失いたくなくてクールにやり過ごした。もう少しリスクを取ってもよかったか。少し悔いが残った。おゆきはんはその女に、つまらなそうに広末を歌って聞かせてやっていた。
日が暮れて、西荻に移る。駅前をすこし散歩して、おジョブがこの街に越して来るように仕向ける。
さいのね庵に入って、「いずみさんのカレー」で夕飯にする。
ぼくの神戸のおゆきが、まいこさんとその仲間たちのいる空間に座っているのは愉快であった。
おゆきはんはここでもぼくの体重(約54キロ)を披露して、ぼくはその数字の是非について自身の考えを説明する事態に陥った。居合わせたユーピーは理解を示してくれたりした。しかし、今夜思い至ったのだ。おゆきはんがぼくの体重を言い散らす真意は「あなたそんなに細くて死ぬよ太りなよ冬寒いよ、食べなよ、あなたに会えなくなったら寂しいわ、健康診断行きなよ」ということらしい、と。ちなみに身長は約170cmである。
なんだか二人にぼくの休日に付き合わせたという感じであった。楽しかった。コーヒーを飲みすぎた。スバルちゃんはおジョブを乗せてもよく走った。






