なんとか金曜日の仕事も終えて、一息ついた。
風呂に浸かって本を読んで、料理と食事とそのあとの片付けをしながら、ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』を観た。この映画はずっと気になっていたのだ。
主演の役所広司が演じるのは、古いロックと読書を愛する、独居の初老の男である。男の名が平山というのは、ヴィム・ヴェンダース監督の小津安二郎への追慕の念であり遊び心であろう。この平山は、毎日を規則正しく生活する。日が昇る前に起きて、公共トイレの巡回清掃の仕事へと軽バンで向かう。車中では缶コーヒーを飲み、カセットテープを選び、ロックを聴く。ほとんどだれとも会話をせず、求められる以上の丁寧な仕事をする。一杯だけ酒を飲み、家に帰り、布団のなかで本を読んで寝る。次の日も同じだ。週末になると、自転車で出かけ、古本屋で文庫本を一冊選び、その足で行きつけの飲み屋に寄って食事をする。男は繰り返される日々のなかで、木漏れ日に目を奪われ、音楽に喜びを感じ、ひとり笑う。基本的には無口だが、感情の起伏はむしろ大きい。それを役所広司が少ないセリフでうまく演じている。
いい映画だ。片手間で観るべきではなかった。そのうちにもう一度、ゆっくりと見直したい。
深夜、机に向かって写経に興じた。写経といっても、写したのは経文ではなく俳句の辞典だから、写経のようなこと、と書くのが正しい。三橋鷹女についての評論を写した。このような時間がなによりの生きる喜びだと大真面目に感じるが、これではまるでさっき見た映画の平山そのままなのである。映画を見ながら、ぼくには平山の暮らしがどうしても他人事とは思えなかった。
今夜も夕飯は手抜きだ。出来合いのさつまあげを鉄のフライパンで温めて、今日買ってきた静岡の生わさびを擦って、わさび醤油で食べた。生わさびが美味い、それに尽きる。絶品であった。味噌汁はほうれん草。米は今日から富山のコシヒカリの8分づきになった。

