フォークは鋭く落ちるほうがいい、20250203

16時過ぎに家を出て、府中の法務局まで走った。8キロ弱の道のりだから17時には充分間に合うつもりだったのだが、信号待ちのロスタイムを失念していたし、曲がる角をひとつ間違えたからぎりぎりの到着になった。ちょうど西には日が沈むころで、さしずめメロス・ランとなって、そのスリルは楽しかった。メロス・ランとは走れメロスのように日没までに目的地に到着できるように必死に走ることだ。この走り方はおすすめしたい。走る大義を感じられてとてもいい。それから、曲がる角を間違えたことでよさそうな古本屋を見つけた。

法務局の窓口の受付にも間に合って、必要な文書は無事に引き出せた。

復路はさきほど見つけた古本屋にまず立ち寄った。改めてよく視ると、店内は蔵書の整理だか改装だかで営業しておらず、軒先の棚の品がどれでも一冊100円で投げ売りにされていた。代金を入れるためのカンカラが置いてあって無人販売になっていた。クラシックのCDも棚一つ分並んでいて、いかにも掘り出し物がありそうだが、手元がすでに暗く、こちらは諦めた。文庫の棚から7冊選んで、法務局のお釣りの950円から払った。ふだんは小銭など持ち歩かないが、展開が良くできていて感心した。

カンカラの脇には「お釣りのないように。多くても、少なくても、いけません」と、うろ覚えだがたしかそんな注意書きが記されてあって、この文体が妙によかった。あとになって思い当たったのだが、どこか宮沢賢治の文体のようでいいのだ。そうすると「お釣りのないやうに」と書きたくなるところだが──

府中の「銀装堂(ぎんしょうどう)」という店だ。近所の人はぜひ。

買ったはいいが、背中のランニング・ベストには会社の文書を筒状にして入れてあるから文庫はしまえない。仕方がないから両手に本を掴んで小脇に抱えて家まで走った。それで図らずも指先の筋力が鍛えられることになった。なるほど、フォークをより鋭く落としたい先発投手は文庫本を掴んで走るといい。南国のキャンプ地にこの声が届いてほしいものだ。

都合15キロのジョグとなって満足だ。だが文書は汗で濡れてくしゃくしゃになっていた。一応は光沢紙の冊子に挟んで保護していたのだが、意味がなかった。しばらく言葉を失った。

夕飯はぶりの塩焼きをふた切れに、蓮根の味噌汁とセロリのキューピー・サラダを添えて、米もたっぷり食った。ぶりはコールド・スタートで、なおかつ油を処理しながら焼いたらずいぶんよく出来た。美味かった。

猫は先日取り乱したときに身体が汚れたのが嫌だったのではないかと考え、シャンプーをしてやった。見た目にも毛がふっくらして、高級感がでた。どうやら猫の御意にも適ったようでよかった。猫に中島らもさんの「いいんだぜ」を歌って聞かせても仕方がないのだ。このような実際的な世話がいいに決まっている。