すこし長い距離を走りたくて、目処は羽田空港として家をでたのだが、川崎駅で降参した。なんか帰りたくなっちゃったのだ。帰りたい我が家があると、こんなとき困る。多摩川沿いを25キロ走って、空港まではあと5キロほどだったか。いまこうして書いていると、走り切ればよかったなあ、と思う。夕暮れ時の航空機を写真に撮れただろうなあ、とも思う。後悔ゴール手前に立たず。これはこの競技のひとつの真理でしょうな。
川崎駅は巨大なステイションだ。普段は駅の脇をクルマで通り過ぎるばかりで、歩いたことはほとんどない。コンコースには列車の発着を一望できるそば屋やカフェがあって、それはなんともいい感じだ。それにしても、年末は買い物をしたくなるものだ。金はないが、なんか買いたいよ、おれは。駅ビルの本屋に入って、町田康とスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチを一冊づつ、それから文房具売り場なんかも覗いて、いい感じのメモ帳をひとつ買った。楽しかった。うきうきした。満たされた。
このとき16時ごろ。買った本を読みながら甘いものを食べることと、ラッシュ・アワーの前の電車に乗って帰ることを比べて、後者を選んだ。これは仕方がない。ラッシュ・アワーはたいへんだ。昨今、利用者の多い南武線は6両編成なのだから。
電車に揺られながら買ったばかりの町田康を開いた。読み始めて、これは破顔をとても隠せないと、すぐに諦めて、そのあとはかまわずに笑いながら読んだ。変なやつだと思ってくれ、本読んでんだこっちは、とつい自分なりのパンク口調になる。選んだ本は『猫のエルは』だ。こんな疲れた夕には、寓話がとてもいい。
地元の駅で食材を買って(甘いもの買えばよかった! とやはり後悔)、家まで歩いた。西の空に月と金星が並んで浮かんで美しかった。おれが写真を撮るとこんな感じ。そっちはどうだい。
