この猫のこと、第三回、布の素材と冬支度、20241113

布の素材にうるさいところもこの猫は飼い主に似ている。この猫がコットン製品ばかりを好むことはわかっていたが、今回の冬支度にはアルミシート入りのマイクロファイバー毛布を買い与えた。店頭でも、家に持って帰ってきてからも、飼い主が素肌で触れて性能は確かめた。自分の体温がアルミシートによって反射され、マイクロファイバーがその熱を効率的に保温している、らしい。とても暖かい。問題はこのふわふわの触り心地だった。この猫が好きなざくざくのコットンとは大きく異なる。

だが飼い主としては、寒い季節を暖かい環境でなにもせずに眠って過ごして、長生きしてほしい。そこで猫を新素材に慣れさせるために一計を立てた。

まず彼のいちばんのお気に入りの場所であるオットマンに敷いてあるコットンタオルを撤収して、猫の穴蔵型ベッド(夏の間はあまり使われていない)に移した。そしてオットマンにはアルミ入り毛布を敷いた。猫は何度オットマンに乗せてもすぐに降りる。降りて、足先を神経質に振ったりして不満顔だ。失礼なやつだ。だがここまでは想定通り。寝る場所を失った猫は、その鼻を頼りに愛用のコットンタオルを探し出す。そしてコットンタオルが敷かれた穴蔵型ベッドを久しぶりに使い始める。「そうだ、冬の間はここで寝るとあったかいんだった」と猫は思い出す。かわいい。

そのようにして3、4日は穴蔵型ベッドとコットンタオルの寝床に慣れさせた。これだけでも冬支度としては及第点だ。並行して、オットマンに敷いたアルミ入り毛布も空間に馴染ませる。そして辛抱強く猫を運んで、置く。日毎に猫がマイクロファイバーの触り心地を受け入れ始めているのがわかる。毛布の上でおやつを与えたり、ブラッシングをしたり、彼の喜びと新しい毛布を関連させてやる。

そしていよいよ計画の最終段階。コットンタオルをオットマンに戻し、アルミ入り毛布を穴蔵型ベッドに敷いた。ふたたび知ってしまった穴蔵型ベッドの暖かさに抗えない猫は”シーツ”の素材など問題にせず、きっと寝るだろう。そして、寝た。歓喜の我が家であった。

ほかにも、ホットカーペットを出したり、諸々の配置を変えたりした。猫は概ね冬の我が家に満足しているみたいだ。とくにアルミ入り毛布と穴蔵型ベッドの組み合わせはたいそう心地がいいらしい。だいたい一週間ぐらいかけての戦略的冬支度はうまくいった。

これが彼の夏の寝床。オットマンと座布団とコットンタオル。一日中、一晩中、ここで寝ていた。
そして冬の寝床。穴蔵型ベッドとアルミ入りマイクロファイバー毛布。こんどはここから出てこなくなった。