神宮球場で対ドラゴンズ戦をみた。球場で観戦するのは5月の末以来だ。夏のあいだの徹底した穴熊暮らしをあらためて思い知る。新宿駅の人混みや球場の大音響がちょっとした衝撃だった。16時半にブルペン上方の席に着いて本を読んでプレイボールを待った。
先発の山野は4回までに5点を取られて降板した。代わった木澤も流れを止められず2失点。この日の試合はこの7点を追いかける展開だった。
最多安打タイトルを目指す長岡が5打数4安打で打線を引っ張った。サンタナはあと数メートルでホームランという当たりがたしか4本あった。そのどれもが強い風に流されてしまった。惜しい。調子はよさそうだ。今夜の村上はさっぱり。チームは12安打を放って1点差まで迫ったが敗戦。ドラゴンズの遊撃手・村松の攻守には何度もチャンスを潰された。近くの席のおっちゃんは「村松消えちゃえっちゅーの」と叫んで地団駄を踏んでいた。もちろん「ちゅーの」が気になった。真後ろの席の西川ファンの女性は最終回の西川の盗塁に対して行われたリプレイ検証で「ぜったいセーフじゃん。まじ意味わかんない」とヒステリーを起こしていた。セーフがコールされるとライト・スタンドは黄色い声の歓声に包まれた。真後ろからは「すごい! ハルキすごいんだけど!」。野球観戦というのは野蛮なものだ。懐かしい。
じつはこの後ろからの声に途中耐えられずにAirPodsを耳に突っ込んで音楽を聴いた。神宮球場の座席間隔はなにしろ狭いのだ。彼女の口はぼくの耳のすぐ後ろにある。これは仕方がない。それでぼくは彼女の職業や、職場の人間関係の複雑さや、年齢や、韓国で鼻にヒアルロン酸注射を打ったことや、かつてはファイターズのファンで札幌ドームでの西川の勇姿を何試合も見ていることなどがよくわかった。連れの女性は彼女の話に終始相槌を打つだけだった。そういう役割分担なのだ。それはそうと、音楽を聴きながら野球を観戦するなんて初めてのことだった。見上げると照明に照らされた雨粒がものすごい速さで落下してきて、ぼくや神宮球場に突き刺さった。これがなかなか壮大な体感となった。
これだけの人間が集まればいろいろなことがあるわけだが、スポーツ観戦は一種の祭りであると定義してからは、この混沌をけっこう楽しんでいる。
帰りは走って帰った。原宿から井の頭通りに入って、甲州街道へ出た。22キロ、2時間ジャスト。この湿度のなかでは悪いタイムではなさそうだ。
