2024年の開幕戦は、相手の守備のミスによって生まれた突破口を、すかさず走塁で攻めて勝負を決めた。
このゲームを象徴する走塁は2回の裏、山田哲人が3塁に進んだタッチアップだろう。中堅手の定位置に飛んだ打球をみて、2塁走者の山田は迷わずタッチアップ。返球は遊撃手がカットして3塁には投げず。これで1死3塁、積極的な走塁でチャンスを作った。「おお、山田はやっぱり速いなあ、スライディングうまいなあ」などと見ていたのだが、どうも塁上での山田の顔が晴れないのが気になった。結局この回は長岡の投手ゴロで3アウトになるのだが、この時の山田の本塁への走塁を見返してみるとダッシュをしていないように見える。もちろん走塁判断として力を抜いたのかもしれないが。
次の回の守り、まもなくプレイがかかる直前になって、山田がようやく守備についた。その様子をカメラがアップで追いかけると、彼はひどく汗をかいていた。一塁手のオスナの問いかけに反応した山田の表情は厳しい。走塁中に異変が起きたことは間違いなさそうだった。中継のカメラはこのイニング間に、ベンチでうつむく高津監督の姿も映し出していた。山田はこの回の守備機会をこなしたが、2打席目の打順で代打が送られた。(これを書いている土曜日の昼過ぎ時点では山田の登録抹消が明らかになっている)
最近、アスリートのメンタリティについての話をきいた。オリンピックで金メダルを獲得するようなレベルの選手も、世間から思われているほど強い人間ではないのだ、という話だった。たしかに肉体は常人とは比べ物にならないくらい強いだろうが、内面はかなりのストレスに晒されていて、とてもナーバスだという。開幕戦の1打席だけで戦列を離れたキャプテンのことが心配になる。牛のように図々しく、どうかコンディションを整えてほしい。
山田が退いたあと、残されたナインは走りまくった。塩見は盗塁と相手のエラーで1塁から3塁まで進んだし、村上もやはりエラーの間に2塁まで走った。武岡は送りバントで自分も生きたし、捕手が前に弾いたパスボールで本塁を奪った。巨体のオスナも相変わらずの全力疾走で内野安打。並木は西田の放った浅いライトフライでタッチアップ成功。これもすごいスピードとベースタッチの技で、持ち味を発揮した。9回の裏、満塁のピンチで左中間への大飛球を追いついた西川の守備も走力を見せつけたといっていいだろう。そしてこのプレー、外野手がフェンス間近でグラブトスを有効に使うという珍しいシーンを見させてもらった。捕球後すぐに、カバーリングに入った塩見にボールをトスして、ランナーを1、2塁に留めた。結果的にはセカンドゴロのダブルプレーでゲームセットとなったから、とても大きなプレーだった。
あとは忘れてはならないのが8回をわずか13球で完璧に抑えた木澤だ。その裏に一気に逆転したから、勝ち星も彼についた。この投手は不思議と勝ち星が舞い込む。今シーズン、個人的に注目している選手の一人はこの木澤である。
ベンチ入りの野手を次々に送り込んで、その選手たちがみな躍動した。初戦から全員野球だ。山田のことはとても心配だが、野球の面白さが詰まったゲームだった。
僕が選ぶ開幕戦のマン・オブ・ザ・マッチは武岡だ。1点を追う6回の裏、無死1、2塁。2塁走者に脚の速くないオスナを置いての三塁線へのバントは見事だった。そして武岡自身も1塁セーフで、無死満塁とした。セカンドとショートのどちらも無難に守った。若い彼の全力プレーがチームの士気を高めていたと見えた。素晴らしい。
