湘子が言うように、俳句に限らず芸術には到達点がないとすれば、僕のような俳句結社に参加して3ヶ月の人間などまだ初心者にもならない。どうやら10年やってようやく駆け出しらしいが、きっとそうだろうな、と思う。しかしこれは、なかなかいい本に出会った。『20週俳句入門』のことだ。鷹俳句結社の現在の主宰は湘子のあとを継いだ軽舟先生だが、選んだ結社も僕に合っていたのだろう。この月末も句作のいくつかの締め切りに追われている。毎度苦しいが楽しい。経験や知識の多寡が肝要であれば、勉強にも身が入るというものだ。
半蔵門で仕事を終えて、クルマの中で税理士事務所とオンラインMTG。そのあとで竹橋の東京国立近代美術館に『中平卓馬 火–氾濫』展を見に行った。大判プリントを見るだけでも充分に満足できる展示だが、この写真家の場合は雑誌のテキストと一緒に写真を読むことが重要なのだろう。ちと高くはなるが印刷物をいろいろと手に入れたいものだ。来場者は僕が思ったより多く、賑やかだった。それにしても、欧米からの旅行客の多さには驚く。まるでこちらが旅行者になったかのように錯覚する。
コレクション展もさらっと見て帰宅。
日焼けした肩の炎症がぶり返して、たまらず皮膚科へ。病院嫌いの僕は対処が遅れた。
相変わらず不慣れな病院に緊張しつつ診察室の扉を開けるやいなや「なーによー、どこに行って来たのよー」と先生。あまりの気さくさに一瞬動揺したが、決して嫌な感じはしなかった。
「あ、あの、マラソンを走ってるときに焼いてしまいまして」
「へえー、マラソンすごいねえ、みせてみせてー。ああ、焼けてるねえ、火傷だからねえ。大変だよねえ」
「はあ、日焼け止めを塗り忘れまして」
「だめだよねえ、それはねえ」と、終始こんな感じ。
先生はパソコンになにやら打ち込みながら、ずっと喋っている。バーでたまたま隣り合ったら楽しいだろうな、などと思った。
薬局で薬を待ちながら、病院嫌いを改めようと思った。僕を改心させたこの皮膚科医は名医である。今夜もらった薬を飲み終えたら、心療内科にいこう。そのあとで、健康診断にもいこう。
先生いわく「最強ステロイド」を処方されて、雨の中を一駅、電車に乗って家に帰った。



