諏訪湖から山に入る、北アルプスを偵察する、『罪と罰』、20240211

府中から中央道の下り線に乗ったのが深夜0時前だった。一人旅だから計画を言葉にする必要がない。頭に思い付いたイメージを頼りに、まず高速に乗ったという感じ。山を目指す。運転を楽しむ。星が綺麗に見えるはず。その程度のイメージだけで西へとクルマを走らせた。ちょうど新月で空は暗く、雲もなかった。星空鑑賞にはうってつけの条件に思えたのだ。

2時間弱走って諏訪湖を過ぎたところで高速を降りた。そこから山の中を闇雲に進んだ。もうこのときはただ雪上の運転を楽しんでいるだけだった。宿命的に外へと逃げていく後輪の動きを感じ取るのは愉快だ。何度かクルマを止めて外へ出た。エンジンを切ると真っ暗になる。闇に目が慣れるまでじっと待つのだが、四方の森から無数の視線を感じて怖い。これは実際に野生の生物に観察されているのだろう。彼らにしてみれば僕は侵入者である。

白樺湖のあたりまで来た。標識の一方に車山高原とあったから勾配を登って行った。ところが誤算だったのはスキー場。どこのゲレンデも煌々と照らされている。なにやら朝からの営業に備えて人工降雪が行われているところもある。せっかくの夜の雪山もこれでは風情がないが、見る方角を選べばそう悪くない光景ではあった。星空鑑賞はまた別の機会に計画するのもいいだろう。それこそ三宅島でもできそうだ。

さてこのあとだ。軽井沢へ出れば浅間山、松本に出れば北アルプス、と迷って、松本へ向かった。この旅の道中のBGMは『罪と罰』の朗読にした。すれ違うクルマもない闇夜の山道を走りながら、ストーリーにとても集中できた。

結局、松本を通り過ぎて白馬まで行った。ジャンプ台を眺めながら朝を迎えた。すこし休憩した。

せっかくの機会だから北アルプス登山のための偵察をしながら帰ることにした。松本に戻り、アルプス公園というところに寄った。市街地のすぐそばの小山の上にある見晴らしのいい公園だ。そこから北アルプスの稜線を観察したのだが、残念ながら3000メートル級の山々は雲に隠れていた。しかし、園内の資料館で足りない情報を補うことができ、だいぶイメージが膨らんだ。

公園内を少し歩いた。雪の上の散歩が気持ちいい。そり遊びの家族連れや、雪上を走るランナー。いい土地だ。

13時、帰路に就いた。大人しく最寄りの松本インターから高速に乗って、90キロをキープしてのんびりと、ひたすらまっすぐに走らせた。『罪と罰』もだいぶ進んだ。ラスコーリニコフはすでに事件を起こして、取り乱しているところだ。なぜ人はこの元大学生に惹かれるのか。やっぱり好きだ。車中からは八ヶ岳連峰と南アルプスを観察する。昨年登った北岳を遠くに見ながら、その高さに驚く。今年はもう少し登山にも力をいれようと思い定めた。

16時半、帰宅。正味17時間の旅だった。

猫は、不審な目で僕を迎えた。