こうして年末年始の休みに行くべき場所があるというのは、幸せなことかもしれないと、ビジネスホテルの部屋の中で一人過ごしながら思う。もう2時だ。池澤夏樹の小説を読んでいたら遅くなった。
今日は茂原の伯母夫婦を訪ね、そのままこちらに泊まり、明日の大晦日は富津の祖母を訪ねる。富津の祖母は、伯母の母である。
茂原の伯母夫婦には子供がいない。二人とも脚が悪いから、大掃除となると労働力が必要になる。ほかの甥や姪(僕の姉とか)たちはみな家族があるから、独り者の僕が重宝される。盆と暮れには茂原に出向いて汗を流すのが、この3年ぐらいですっかり習慣となった。
予定通り13時に着いて、3人でたい焼きを食べてから仕事にかかる。築100年を超える巨大な古民家だから柱も梁も木が立派だ。これを固く絞った雑巾で拭くと艶が出るからやりがいがある。
伯父さんはベテランの経営者である。人に指示を与えることに慣れている。僕はそれに従い、指示を待つ間は適当に仕事を見つけて手を動かす。すると伯父さんは「君は筋がいいよ」と言う。毎年やっていれば仕事は覚える。
日が暮れるまで作業をして、食事に出かける。伯父さんはこういう時に、必ずシャツとジャケットに着替えて、腕時計を選ぶ。尊敬すべき流儀だと思う。
200gのステーキとサラダをご馳走になる。「若いからこういう食事が好きだろう」と、伯父は言う。有無を言わさぬ聞き方だとは思うが、重労働のあとだからたしかに悪くはない。肉だって上等だ。佐渡の赤石についての話しを聞かされる。
食後にコーヒーを飲んで、店の駐車場で別れるのがいつものこと。すべて伯父さんのプランに従って動く。やはり社長なのだ、と思う。
盆に会ったときは体調を崩していた伯母さんが元気になっていてよかった。あの時はほとんど笑顔を見られなかったし、食欲もなかったから心配した。
20時に千葉市内で別れて、君津の駅前の宿に向かった。途中、給油と洗車を済ます。これも大事な正月支度。
宿のテレビを付けると映像の世紀はビートルズについて。これを見ながら、ほろりとサッポロビールを飲んだ。


