丸の内で仕事を終えたのは11時半。午後に予定はなにもなかった。都心でなにか用事を見つけてもよかったのだが、疲れたから自宅で過ごすことにした。機材をクルマに詰め込んで大きなビルの駐車場を出た。頭の中に描いた帰り道は甲州街道を調布まで行き、鶴川街道に入って多摩川を渡るルート。
途中、新宿のヨドバシカメラに寄って文房具を買い、再び甲州街道を進む。道も空いていて順調だったのだが上北沢のあたりの分岐をうっかり東八道路の方に入ってしまった。これは長年の杉並暮らしの癖のせい。杉並にいたころは東八道路から帰宅していたのだ。まあ少し遠回りにはなったが大したミスではない。それにしても習慣というのは根が深い。
東八道路をしばらく真っ直ぐ行くと神代植物公園の看板が目に入った。久しぶりに植物園を散歩するのもいいなと思い立った。道を間違えたのもなにかの縁だし、時間もある。
クルマを停めて園内に入る。空はたっぷりと水蒸気を貯めこんでいて風がほとんどない。雨こそ降っていないが、とにかく蒸し暑かった。少し歩くだけでも嫌な汗をかく。それならばと温室に行ってみることにした。温室なら年中温度と湿度がコントロールされているだろうと考えたのだがこれは正解。温室の中の方が外よりずいぶんと過ごしやすかった。食虫植物(巧妙なネズミ返しがいやらしい)や、熱帯スイレン(水面から数十センチのところに花を咲かす)や、パイナップル(葉をツボのようにして水を貯め、そこに落ちた葉や虫の養分を吸うらしい)などなど。気分転換にはなかなかいい散歩だった。しかし植物園でマスクをするのはもどかしいものだ。植物の香りはマスクを隔ててもそれなりに感じるのだが、マスクがなかったら、と思う。天気の悪い平日の午後だから周りに人は少ないのだが、いちいちマスクを上げ下げすることが億劫だった。マスクにすっかり慣れてしまっていることを虚しく感じるこの頃である。