稲田のリフレクションとミック・ジャガー

3月も終わりに近づき、房総半島の稲田には水が溜まり始めた。このあたりは早場米の生産が盛んだから田植えの準備も早い。朝の時点ではまだ水が溜まっていなかった稲田が、日が暮れて帰ってくる頃には街灯や民家の灯りを反射させて、揺らめきながらきらきらと光っていた。昼間のうちに水が溜められたのだとわかった。雨が降る闇夜だった。真っ暗な田園地帯を走らせる運転席からは畔さえも見えなかった。取り囲む林も黒く塗りつぶされて、大げさに言えば地上に輪郭というものがなかった。そんななかで水が張られた稲田だけが人工の灯りを水面に映し出して揺れていた。ワイパーは規則的に働き、タイヤは雨を静かに弾いて、周りには他のクルマもいなかった。とても幻想的だった。聴いていたミック・ジャガーのソロアルバム『Goddess In The Doorway』がとてもよく合った。